みなさんこんにちは。臨床家のたまご、SAKANAです。
前回、臨床心理士2次試験の集合時間に遅れてしまうという大失態のお話をしました。事前の準備と早めの行動がいかに重要かを身に染みるほど痛感した経験です。
さて、今回は実際に面接官の先生方とお話をするなかで感じたことを、お話しできる範囲でお伝えしようと思います。
ここで、「お話できる範囲で」とわざわざ記したのは、面接の内容を事細かに報告することが目的ではないことをあらかじめお伝えするためです。
インターネットで「臨床心理士試験 面接」などと検索すると体験談が沢山出てきますので、面接でどんなことを聴かれるかは他の投稿にお譲りしたいと思います。
服装について
基本は、自分の雰囲気と「面接試験」という場の状況に合った服装ができていればよろしいと思われます。
大学院を修了されて間もない方ばかりでしたので、男女ともに9割以上は黒のリクルートスーツを着用されていました。男性の場合、ネクタイの色や革靴の色など女性よりも悩みそうですよね。
お相手の方に不快感を与えない、心理士として落ち着いた雰囲気が伝わるような配慮があるとよいのかもしれません。
ちなみに私は紺のノーカラージャケットのスーツに、革のパンプスを着用して行きました。
インナーは襟なし丸首の白のブラウスです。髪の色は暗めの茶髪でした。
イメージとしてはこんな感じです。
|
|
営業部にいそうな感じかもしれません。
ちなみに、コートやマフラーはスーツケースと一緒にコインロッカーに預けました。
面接の枠について
概要は以下の通りです。
- 面接前の待機場所
- 待機室にて、面接の注意事項について説明がある
- 誘導係の方から5〜6人ずつ名前を呼ばれ、一列に並ぶ
- 受験者ごとに一人ずつ面接室前の通路に着席していく
- 面接室の前(通路脇)に長机が置かれ、各部屋担当の案内係の方が座っている。その場(足元)に荷物を置き、パイプ椅子に座って前の面接が終わるのを待つ(面接中の受験者の荷物もその場に置かれているので注意)
- 前の方が出てきたら面接室担当の案内係の方から声がかかり、入室する
- 面接室内の様子
- 広さは小会議室程度
- 面接官の先生は2名
- 面接官と受験者の間にアクリル板の衝立あり
- 面接官と受験者の距離は2〜3mほど。受験者側にも机あり
- 受験票とスマートフォンを入れた袋を机に置く
- 面接時間
- およそ10分〜15分程度。内容によってやや前後することもあるよう
面接内容の概観
ここが皆さん気になるところかと思います。
印象としては、当たり障りのない簡単なやりとり(ウォーミングアップ)のあと、本題に入られていたように思います。
また、私の場合は一度社会人を経験しています。先に公認心理師を取得していたことも、大きなポイントでした。
以前書いた「なぜ?」という問いを大切にする記事の中で少し触れましたが、「あなたはなぜ臨床心理士になりたいのですか?という問いを、次のポイントから掘り下げられました。
- 会社を辞めて、なぜ臨床心理士を目指したのか?
- 公認心理師を持ちながら、臨床心理士を取る必要性は?
面接は提出した職務経歴書を元に展開していた印象でしたが、話の流れを俯瞰すると、1過去、2現在、3未来の軸で質問をされていたように思います。同期の友人にも話を聞いてみましたが、受験生の背景や会話の流れで細かいところは変わりますが、概ねこの3軸について確認をされるようです。
以下、友人からきいた話も踏まえてどんな質問がされるのか大まかにまとめてみます。
- 過去の経緯について
- なぜ臨床心理士を目指そうと思ったのか
- 大学院で学んだことは何か
- 在学中のケースで印象に残っていること
- 現在の仕事について
- 現職についての確認
- どんな施設か
- どんな仕事内容か
- 仕事をしていて困ったことは
- どのように対処しているか
- 所属学会の確認
- 将来の展望について
- これからどうしていきたいか
- どうやって研鑽するか
- 公認心理師を持ちながら臨床心理士を目指す理由は?
1と2については、対応したケースと、それに対する理解、対処方法などについて聴かれることが多いようです。公認心理師に関する質問は、おそらくここ数年で定番化されたものではないかと推察されます。臨床心理士としてのアイデンティティを問う質問なだけに、日頃から公認心理師と臨床心理士の相違点について、自分なりの答えを持つことが重要だと思います。
臨床心理士を持つことで、自分の臨床活動がどう変化するのか?公認心理師との違いは?あなたの答えはなんですか?
私の場合、生殖心理カウンセラーを取得して、不妊に悩む方の支援に携わりたいという大きな目的がありました。
そのため、臨床心理士や公認心理師の資格を取得することは、一つの通過点という位置付けでした。
ですが、やはり面接官の先生は限局した分野を目指そうとしている姿勢についてつっこまれました。
明確な目的をもって資格取得に臨まれている方ほど、こうした質問は出やすいと思います。
よりピンポイントな領域を目指そうとされている方は、特に「汎用性」というキーワードを大切にされてください。
私はなんとなく、この「汎用性」というワードが1次試験の論述問題で出そうな気がしていたので、赤本で繰り返し目を通していたことが幸いしました。といっても、ジェスチャー混じりで必死に伝えようとするあまり、しどろもどろでしたが……(苦笑)。
|
臨床心理士試験必読書です。
臨床心理士としての心構えや、資格試験の申し込みから登録申請までの大まかな流れ、臨床心理士倫理綱領、前年度の過去問、そして申請書類取り寄せのための払込票(受験料ではない)がついています。
私は1次試験前に購入したので使いませんでしたが、この払込票、記載事項が多く、地味に大変です。
受験申請をする前に購入して、付録の申請書を使って手数料を納付すると楽だと思います。
ちなみに、この本、購入前に「令和◯年度」と書かれている箇所をよく確認することをお勧めします。
私は間違えて前々年度のものを購入しました……。
毎年、6月〜7月頃に最新版が出るようです。
面接から学んだこと
さて、臨床心理士試験について調べていると、必ず「圧迫面接」という言葉が出てきます。
2次面接経験者の方のブログを拝見していても、「圧迫面接だった」、「圧迫面接じゃなかった」という報告が散見されます。
私の場合は「見えない圧迫面接」という表現がしっくりくるような面接でした。
受験者がAを言ったら逆のBをつっこみ、Bと言ったらAをつっこむ、という感じ(伝わるかな……)。
例えば目指したい専門分野が決まってなくて漠然としているという印象を抱かれれば、自身が寄って立つオリエンテーションや目指したい領域について細かく聴かれると思います。反対に、目指したい専門分野が決まっていてより明確であればあるほど、反対に「汎用性」というより広い視野を持っているかどうかが試される。
一つは、主張と反対の意見を言われた時に、受験者がどういう反応を見せるかを確かめているのだと思います。
実は、汎用性のくだりとは別のやりとりの中で、質問に対して言葉につまりかけ、何とか自分の考えを伝えよう!とあがいた一幕がありました。しかし、面接官の視線がじっと私を見つめるように向けられていることに気がついた瞬間、あれこれ弁解しようとしていた自分がいることに気づき、我に返りました。「……と、思っていたのですが、今言葉にならない時点で考えが至っていませんでした。申し訳ありません」と素直に非を認め、謝罪すると、試験官の先生方が揃って深くうなづかれていたのが印象に残っています。
そしてもう一つは、臨床心理士という資格が、「汎用性」と「個別性の尊重」という矛盾の上に成り立つ性質を帯びているため、バランスを持った人物かどうかが試されているのかもしれません。
目の前の人物に深く寄り添うと同時に、社会全体に目を向ける姿勢を持たなければならない。臨床心理士とはそういう資格なのだということを、改めて肝に命じました。
細かいことを公にするのは控えさせていただきますが、臨床心理士試験の口述試験がなぜ大切なのか。それは、今後臨床心理士を目指す立場として、「あなたの課題はここですよ。気づいていますか?」とお土産をいただく場でもある、ということだと思います。もちろん、そのお土産に気付けるかどうかは私たち受験者の力量(洞察)にかかっているところもあると思いますが。
臨床心理士試験を受験される方へ
以上、臨床心理士試験の面接を振り返ってみました。
私なりに感じたポイントを改めてまとめると、以下の通りです。
- 面接試験は臨床同様、その場のやりとりの中で展開される。面接を受けながら自分がどういう気持ちになっているか、感覚を研ぎ澄ませることが大切。
- 職務経歴書はコピーをとり、自身の経歴について端的に説明できるようにしておく。
- 日々のケースをどう見立てて、どう理解し、どのように支援しているのか?振り返る時間を大事にする。
- ヒートアップしそうになっていたら一呼吸おく。至らないところを認め、言葉にできることも大切なポイント。
- 今、目の前のやりとりの中から「学びを得る」という姿勢で挑もう。
私は失敗ばかりしている人間です。
でも、失敗をすることがダメなのではなく、失敗から学ばないことが問題なのだと思っています。
ただ面接を受けただけなのに、面接が終わった後の落ち込み方はとてもじゃないけど言葉にできませんでした。
何を話してもまとまらず、しばらくは自我が崩壊していました。
だけど、もし面接の結果が良くなかったとしても、結果はあくまでも面接官と受験者の中で交わされた活きたやりとりの結果であり、受験者の人格を否定するものではないのだと思います。
受験者の方々は様々な背景を背負って試験に挑まれていると思います。
受験を決意すること、一次試験にチャレンジすること、二次試験に挑めること、その一つ一つの行動そのものに、価値があると思います。もちろん、臨床心理士の試験を受けない、という選択も尊重されるべきです。
そして、人の心を知り、支えるということは「生きる」という営みについて考えることだと私は思っています。
これは、私の臨床家としてのモットーです。
臨床家も、相談に来られた方も、仕事で関わる方も、その他、今を生きている方々も。
ただ、そこにいるということ、今を生きるということ以上の臨床はないと私は思っています。
たとえ臨床経験が浅くても、知識が玄人に遠く及ばなくても、「生きている」ただそれだけで、人々は臨床を経験していると思っています。
だから、臨床心理士の仕事をしていないから面接が不安と感じる方がいらっしゃったら、胸を張ってほしいです。
臨床心理士の仕事だけが、臨床ではありません。
人の心について考えること、「生きる」という営みについて考える上で大切なエッセンスは、日々の生活の中にあると考えています。
ご自身がこれまで経験してきたこと、その中で学んできたこと、後悔したこと、乗り越えてきたこと。
その一つ一つに、大切な意味が込められていると思います。
みなさんの学びを、みなさんの言葉で伝えることができますように。
みなさんの思いが、試験官の先生に届きますように。
僭越ながら、応援しています。
SAKANA
コメント